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研究依頼の受注及び実践成果に関するレポート
焦げ肉を美味に食せる可能性についての審議結果報告書

2015年6月29日
肉ラボ研究員:喜多 雄亮

1.依頼主による問題提起

 今回の依頼主は、滋賀県在住の大学生、小林誠氏(21)で、依頼内容は「焦げ肉を美味しく食べられないか」との調査テーマだった。
 食べ放題の焼肉屋に行くと、必ずと言っていいほど生産される、どす黒く炭化したことで、誰も食べることができなくなった焦げ肉。小皿へ敬遠される肉が勿体ない。哀れな肉を救うことはできないのだろうかと苦悩していた折、当研究所の存在を知り、迷わず調査を依頼したのが、依頼動機だという。
 なるほど。小林氏に取り上げていただいた問題は、肉の可能性を隅々まで探求し、悩める人類を救う使命を帯びた我々にとって、捨て置けない事例であると判断し、依頼者を早急に研究所まで招聘。対談によってより深く話を進める事とした。

■小林誠さんのコメント

 肉ラボの皆さん、こんばんは。
 私は友人と焼肉屋に行くと、必ず焦げたお肉を生み出してしまうんです。
 食べ放題の焼肉屋では、食べ残しをすると罰金を払わなくてはいけません。そういうときに焦げたお肉を美味しく食べられたらハッピーだと思いませんか?
 研究員の皆さん、美味しく食べられる方法を教えてください!
 よろしくお願いします。

2.クライアントと当機関の会談による仮説

 会談の結果、焦げた肉を普通の肉と同等に美味しく食せるようになることで得られるメリットは、食べ残しをしてしまう事態を防げるほか、新たな料理ジャンルとして「焦げ肉」を確立させられる事など、多数あるという仮説を立て、双方合意した。実現すれば画期的な事例になろう。
 さて、具体的にどうすれば焦げ肉が美味になるのかという推測だが、専門家チームも交えてクライアントと協議した結果、実に13もの仮説が立つに至る。それが次の通り。


焦げ肉を美味しく食べられそうな方法(仮説)

 1  そのまま食べる  8  生クリームを乗せて食べる
 2  スナック菓子だと思い込む  9  炭酸ジュースと一緒に食べる(飲む?)
 3  ポテトサラダをディップ代わりにする 10  白米に載せて食べる
 4  大量にタレをつけて苦味をごまかす 11  塩昆布をトッピングして食べる
 5  塩コショウをありったけ投下し、苦味をごまかす 12  ロールキャベツにすれば何でも美味くなりそう 
 6  美味しいと思い込めば食べられない物など無い 13  キムチをトッピングして食べる
 7  目を閉じ、鼻をつまんで食べる    


 仮説に一通り目を通し終えた小林氏は「本当にこれで大丈夫なのか」と、コメント。不安を隠しきれない依頼人に我々は、この検証を行うために、肉ラボが立ち上げたプロジェクトチームの研究メンバーが、内外から招聘した専門家達とともに鋭意検討した結果であるから、誤算は1ミリも無いという旨を説明。 研究者たるもの弱気になっていては、未知なる発見などありえないと、小林氏を激励した。その結果、小林氏にも大変納得いただけたようで、説明内容に満足された様子だった。

■小林さんのコメント

 正直、この仮説で納得していいのか、すごく悩みました。えっ? というのが率直な意見です。
 だって炭酸ジュースとか、さらに不味くなりそうじゃないですか。
 美味しいと思い込んで食べるなんて、僕はやけくそだと思うんですよ。
 でも、研究所の人が揃いに揃って、あまりにも押してくるから、渋々納得してしまいました。もうこうなったら、最後まで肉ラボを信用するしかありません。
 この研究所、よくわからないけど過去の実績は豊富みたいなので、最終的に何とかしてくれると信じています。

3.実験方法

 【最終目標】 焦げ肉を美味しく食べる方法の解明
 【実験費用】 9600円(焼肉代)
 【検証現場】 チファジャ宝ヶ池店
 【 人 数 】 4名(うち1名は小林さん)
 【特別協力】 小林誠依頼人

 なお、先ほど述べた13の仮説は、すべて依頼主の小林氏自らが被験者となって、検証していただく事となった。一刻も早く、極上の味へと転生した焦げ肉を味わいたい、味わってみたそうにしている小林氏の意向を我々が勝手に汲み取り、栄えある第一被験者の座をお譲りする運びとなったのである。嬉しさ故か、遠慮がちに照れる小林氏を説得し、めでたく検証現場の焼肉屋へ同行していただける事が決定した。

■小林さんのコメント

 仮説が何というか…ユニークというか、独創性が高すぎてついていけなくて…。
 でも、どんな仮説を立てようと研究員の誰かが、正しいか間違いなのか、その身をもって実証してくれると思ってました。
 ところがその後、僕自身が第一被験者だとか何とか言われて、そのまま言いくるめられて……。
 信頼はします。しますけど本当に大丈夫なんでしょうか?

4.検証レポート


 

 研究員「どうですか? お味のほうは?」
 小林氏「はっきり言って、まずいです。こんなの、もはや肉じゃない…」
 研究員「肉じゃないとなると、どんな食べ物でしょう? 食感とか味とか。例えればどんな?」
 小林氏「コーンフロスティですかね。バリッとした食感とか、香ばしい味がなんとなく」
 研究員「あれっ、焦げ肉を美味しく食べる方法、見つかったんじゃないですか?
     コーンフロスティみたいに食べられたってことは、美味しかったって事ですよね?」
 小林氏「こんな苦いコーンフロスティ、冗談じゃないですよ。こんなの失敗です。失敗に決まってます」
 研究員「そうですか。じゃあ、仕方ないですね。次いきましょう 」

 結果:失敗




 

 研究員「どうでしょう?」
 小林氏「なんか、せんべいのような。駄菓子? みたいな食感が」
 研究員「じゃあ、お菓子みたいな食感で食べられてるって事ですね?」
 小林氏「食感はそうですけど…。やっぱり苦すぎますよ。僕は美味しく食べたいんです。でもこれは苦いです」
 研究員「確かに、味を改良しなければいけませんね。次いきましょうか」

 結果:失敗




 
 研究員「それでは小林氏、感想を」
 小林氏「カリッと焼きあがった食感にポテトの味が混ざって、ポテチみたいな感じです」
 研究員「美味しいですか?」
 小林氏「まあ、苦味が軽減された分、多少は…」
 研究員「じゃあ、もう解決したんじゃないですか?」
 小林氏「…………」
 研究員「まだまだ大満足には至らないようですね。では次を試しましょう」

 結果:まあまあ




 

 研究員「さあ、今回は?」
 小林氏「うん…タレをつけたぶん、肉が湿ってカサカサ感がなくなった。今までよりは美味しい」
 研究員「おお、やりましたね! よかったじゃないですか!!」
 小林氏「そうかもしれませんけど、塩分の摂取量的にこれじゃ…」
 研究員「なるほど。それも踏まえたうえで、次に…」
 小林氏「あの、また引き続いて僕が味見するんですか?」
 研究員「もちろんです。我々肉ラボとしては、
     小林さんには科学の生き証人になってもらわなくてはと思っておりますので」
 小林氏「勘弁してくださいよ。変なものばかり食べてるから、ちょっと気分が…」
 研究員「それはいけませんね。ちょっと休憩しましょう。どうです、白ご飯でも?
     あ。その間、我々は柚子シャーベット食べてるんで。ゆっくりでいいですよ」
 小林氏「………………………………」

 結果:それなりに美味


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 研究員「さて。ご飯でリセットしたところで、いかがでしょう?」
 小林氏「塩っ辛いです。当然ですよ。こんなに塩ばっかりかけたら…」
 研究員「不味いですか? 食感とかは?」
 小林氏「やっぱりスナック菓子みたいな食感です。
     しょっぱくなったせいで、よりスナックっぽくなりました。でも不味い。苦い」
 研究員「ダメですか…」
 小林氏「ダメですよ。しかもタレの時より塩分増しちゃてるし、不健康です」

 結果:塩辛すぎて失敗




 

 小林氏「これって結局、最初に逆戻りしただけでしょ! 不味いですよ! 試す前から決まってますって!!」
 研究員「まあまあ、そう熱くならず。実験1の時は、はなから美味しいと思わず食べたでしょ?
     でも今回は自分に催眠をかけるんです。気持が変われば全てが変わりますよ」
 小林氏「絶対美味しく無い…!」

 
 どうにか小林氏を説得。研究データを採取する。

 研究員「どうですか?」
 小林氏「はぁ…まずい。もういやだ」
 研究員「小林さん、諦めは厳禁ですよ。これがダメでも、いつか上手くいくはずです。頑張りましょう」
 小林氏「うう…ちょっとまた休憩させて…」
 研究員「いいですよ。はい、お茶です。…おっと、急がないと私のシャーペッドが溶ける。危ない危ない」

 結果:言わずもがな




 

 小林氏「本気ですか。この考え方、ちょっと投げやりだと思うんですけど…」
 研究員「何言ってるんですか。小林さんの熱いリクエストにお答えするため、我々は常に本気ですよ?
     ですから小林さんも本気で頑張ってください。こちらも全力でサポートしますから」
 小林氏「いや違う…確実に何か違う…」
 研究員「つべこべ言わず鼻つまんで。ほら口を開けて。はい、あーん」
 小林氏「ほっ、ほががッ!!?」

 
 小林依頼人に焦げ肉を食べさせて差し上げる研究員。

 研究員「さ、お味は?」
 小林氏「ゲホッゴホッ! ゴホッ、ゴファッッ!!!」
 研究員「おやおや、大丈夫です?」
 小林氏「はあはあ…大丈夫なわけないですよ。息できなくて辛いし、
     カサカサした肉が喉に直接入ってきて、吐きそうです。しかも苦い!」
 研究員「小林さん、小林さん」
 小林氏「…今度は何です?」
 研究員「私が小林さんに、焦げ肉を食べさせてる写真。
     ほら、ちょっと加工するだけで、BL時空になっちゃいましたよ。これには全国の腐女子が発狂s」
 小林氏「するわけないだろ! 何考えてんだよ、アンタ! 真面目にやってくれよ!!」
 研究員「…すみません。度が過ぎました。じゃあ次…」

 結果:大失敗




 

 小林氏「まさか、デザートとして食べる事になるなんて…」
 研究員「でも、この検証の目的は、焦げ肉を美味しく食べる方法を探る事だから、ずれてないはずですよ」
 小林氏「それはそうかも知れませんけど」

 −−もぐもぐ−−

 小林氏「!?…う、美味い! 本当に美味い!!」
 研究員「おお! ついにやりましたね!」
 小林氏「サクサクした食感とクリームの甘さがマッチしてる! 甘味と苦味が溶け合ってて、まろやかな味だ!
     もうダメだと覚悟を決めていたのに…すごい、すごいですよ!」
 研究員「そうでしょう、そうでしょう。気長に根気よく続けていれば、努力は報われるものです」
 小林氏「よかった…。もう万事解決です! さあ、帰りましょう!」
 研究員「は? 何を言ってるんです。まだ実験が、あと5つも残っていますよ?」
 小林氏「−−まだやるの?」
 研究員「はい」
 小林氏「−−僕が被験者?」
 研究員「ええ」
 小林氏「帰りt」
 研究員「次行きましょうか」

 結果:成功!




 

 小林氏「まあ…全くダメではないですよ。
     ホルモンの弾力とジューシーな味がグミみたいで。ちょっと美味しいです」
 研究員「グミですか。やっぱりデザートとして食べたほうが、美味しいのかもしれませんね」
 小林氏「やっぱり僕としては、ちゃんと肉として食べたいですけどね」
 研究員「わかります。一つの肉として食べる方法を発見するため、頑張りましょう」

 結果:まあまあ


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 研究員「焦げ肉をちゃんと肉として食べた感想は、どうです?」
 小林氏「肉の味は若干しますけど、食感がざらざらです。ざらついたご飯なんて不味すぎます」
 研究員「なるほど。焦げ肉とご飯の相性は、よくなかったようですね。まあ、気を落とさず次やりましょう」

 結果:失敗




 

 研究員「小林さん、感想を」
 小林氏「…………………」
 研究員「小林さん? 小林さーん?」
 小林氏「……………………………………………」
 研究員「…その様子だと、失敗のようですね。めげずに頑張りましょう。あと少しですから」
 小林氏「…………」

 結果:小林依頼人、苦悶の表情




 

 研究員「お味は?」
 小林氏「ダメ。ていうか、こんな事で変わるわけないだろ…」
 研究員「ちょっと機嫌悪そうそうですね。」
 小林氏「悪いに決まってるだろ!! 今までで一番まずいよ、これ!」
 研究員「あれっ、そうですか?」

 
 不機嫌のせいで、激しく表情を歪める小林さん。

 小林氏「味がロクについてないキャベツと、焦げ肉の苦味のダブルパンチが最悪です」
 研究員「それは残念ですね…でも、次がラストなのでファイトですよ!」
 小林氏「早く帰りたい…」

 結果:大失敗




 

 小林氏「あっ、美味しい! イケます、イケますよ!!」
 研究員「本当ですか!」
 小林氏「キムチの強い香りと刺激がうまく苦味を消してくれてる! パリッとした食感と強い辛味が絶妙です!」
 研究員「いや〜、よかった。また発見がありましたね! 13通りも実験した甲斐があったというものです」
 小林氏「…僕としては、13通りも実験して、これだけしか良い結果が得られなかったのは悲しいんですが…」
 研究員「そうですか? 研究というのは、そんなものだと思いますがね」
 小林氏「疲れた…」

 結果:成功!

 

5.結果と考察

 実験の結果、小林依頼人がイチ押しした焦げ肉の食べ方は、以下の通り。

順位 食べ方 実験内容詳細
1位 キムチを
トッピング
して食べる
 強力な香辛料の刺激を有する食品なら、焦げ肉の苦味を打ち消せる
のではないかという仮説のもと行った実験。タレや塩よりも一段階上の
刺激と香りを持つキムチを利用した結果、最良の結果が得られた。
2位 生クリームを
乗せて食べる
 「苦味」の反対は「甘味」であるという事実に着目し、辛い調味料で苦さを
消そうという発想は捨て、焦げ肉をデザートとして食べていただいた。当初、
小林氏は食べる前から落胆した様子であったが、思いの外美味だったようだ。

 今回の検証で得られた成果を言うなれば、もちろん焦げ肉の美味しい食べ方が解明された事だろう。だが、それ以上に大きな成果は、どんな無理難題でも地道に努力を重ねれば、必ずゴールにたどり着けるという真理が、改めて確かとなった点ではないだろうか。13個もの実験を行い、そのほとんどが失敗という結果に終わったが、苦労をした分だけ明らかな成果があったと言えよう。
 多大な努力を(主に小林氏が)したからこそ、この結果があるのだ。これを読んでいる貴方も、焦げ肉にキムチや生クリームを乗せて食べる事があれば、この事を思い出していただきたい。なお、思い出す時は、できるだけ小林氏よりも肉ラボの事を優先して思い出してほしい。

 

6.依頼主の感想

 感想? そうですね。この実験は、とにかく疲れたという事ですかね。
 最初から最後まで肉ラボさんのペースで話が進んで、気がついたら僕は乗せられていました。結果、何枚もの黒焦げ肉を一人で食べるはめになってしまったんです。
 こんな経験、もうコリゴリです。もういや。
 まあ、こんな事をしたお陰で発明された「焦げ肉の美味しい食べ方」ですが、そこそこ美味しかったです。
 よかったら試してみてください。



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※この研究所はフィクションです。実在の団体・研究機関などとは一切関係ありません。